音楽よもやま

「〜アジア、音楽の往来 『未来へ』マレーシアで人気〜」

Sept 2018 Okazaki Nobuo  

 日本の歌が海外で、というと古くは半世紀以上前の「上を向いて歩こう」*1(洋題“SUKIYAKI”)坂本九、作詞は永六輔、作曲は中村八大 が、あった。イギリスやアメリカでにわかに人気が出て、ビルボート・チャート1位にまでなった。

『未来へ』がマレーシア(アジア諸国)で人気らしいが、思い掛け無いことだった。
平成始めの日本の歌が、なぜ今もマレーシアで大人気なのか。何か合性のようなものがあるのか。

人気の秘密はKiroroが沖縄出身であることが関係しているという見解もある。
マレーシアの伝統的な音楽の中には、5音階、「レラ抜き」旋律があり、今も大衆音楽にも引き継がれているが、 【音楽1】
音楽1:「Abdi Mah Dulang Tinande」演奏= Euis Komariah & Agus Syarif

これが同じく5音階の琉球音階に酷似している。 (沖縄は歴史的にアジア諸国と交易していたので、この5音階も伝わってきた。) その為、沖縄の音楽が受け入れられやすいのでは、という考察である。
勿論、『未来へ』は5音階ではないが、節回し(こぶし)に沖縄らしいところが有り、これが合性となっているのかもしれない。

歌詞にまで言及する人もいる。それは、 Kiroroの『未来へ』の歌詞には、母への感謝が詰まっているが イスラムの教えでも、この母への感謝の心はとても重んじられていて 共感できると言うのだ。

きっかけとしては 青年海外協力隊(JICA(国際協力機構))の日本人スタッフの影響があったのではないか、と言われている。 JICAのスタッフがマレーシアで日本語教育の一環として教えた歌が、このKiroroの『未来へ』で、 そこから徐々に広まっていった、という説である。

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逆に向こうから入ってきたものでは韓国の”プサン港に帰れ”は日本でカラオケで歌う人も多い。
懐かしい所では、マレーシアではないが、同じ文化圏のインドネシアからはブガロワン・ソロ
も思い浮かぶ 【音楽2】
音楽2:ブンガロワン・ソロ


この曲想は、直感的に、Kiroroの歌う歌に類するようにも、ちょっぴり感じるのだが、 愚感だろうか。

ヒットしたかは知らないが、天童よしみが歌う”美しい昔”はベトナムの歌である。  カーン・リーという人の作品。原曲(ベトナム語)と聞き比べてください。【音楽3,4】

音楽3:”美しい昔”天童よしみ


音楽4:”美しい昔”Ngoc Lan ベトナム語




全くの余談になるが、ベトナムの話が出たついでに、私が自己紹介の欄で好きな曲にあげた”Mua xuan dau tien”を紹介します
ベトナム国家も作曲した、ヴァン・カオの曲でベトナムではよく知られているナツメロ的存在。 タイトルは’新しい春’といった意味、すなはち新春、正月の事を歌っているのだが、賑やかな正月のなかにある憂いを6/8拍子で 哀愁おびて歌っている。あまり知る人は少ないかもしれないが私的に気に入っているものです。 【音楽5】

音楽5:”Mua xuan dau tien” Thanh Thuy




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<トリビア>*1。「上を向いて歩こう」の歌詞の”こう”は2文字1音節なのに音符も4つもつかって
”こおおお”のように歌っていて違和感があるが、
一説によると、作曲の中村八大はベートヴェンの皇帝の初めの部分を意識したものらしい。
言われて聴くとよく似ている。

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