第18回定期演奏会曲目の紹介
演奏会プログラムから曲目紹介を抜粋しました
モーツァルト 交響曲第27番ト長調 KV.199
この曲は成立時期に関する議論がいろいろなされた曲ですが、
交響曲25番と同じく1773年の作曲とされています。
1773年といえば、モーツァルトが3回目のイタリア旅行を終えて
ザルツブルクに帰ってきた直後のことで、この作品にはこの間の
モーツァルトの芸術的な反応が生々しく反映されています。
第1章のアレグロには、モーツァルトの以前のイタリア的な交響曲と
同じ音調が見られますが、緩徐楽章以降にはウィーン風の音調が加わり、
フィナーレは全くウィーン風なスタイルで貫かれるようになります。
モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲変ホ長調 KV.364
モーツァルトは1779年パリ、マンハイム等の音楽先進国への旅を終え
帰郷しましたが、その年の夏のこの曲は作曲されました。
協奏交響曲はフランス革命前のパリの楽壇で流行した形式で、
複数のソロ楽器とオーケストラの饗宴という趣を持っています。
ヴァイオリンの得意とするE線の響きを艶消しにし、ヴィオラの
味わいが出るように、主調となる調性が変ホ長調で書かれています。
モーツァルトはヴィオラのくすんだ響きをヴァイオリンの明るい響きに
負けないようにヴィオラを半音高く調弦して張り合ったのです。
さらに、管楽器が魅力ある役割を与えられており、分厚い弦楽は
ヴィオラが2部になっているなどの特徴があり、オーケストラの全ての
パートが対等に有機的に扱われていていることも魅力を倍加させています。
ディーリアス 「2つの水彩画」
「水の上の夏の夜を歌わん」という副題がついたこの曲は、
もともとは合唱曲として1917年に作曲され、1937年に
ディーリアスの弟子エリック・フェンビーによって、弦合奏用に
アレンジされました。 この曲がつくられたのはパリ近郊、
フォンテーヌブローの森の端に位置する村、グレー・シュル・ロワン
(Gretz-Sur-Loing=ロワール川の流れるグレー(グレッツ)村)。
ここは、19世紀後半に、アメリカやイギリスから来た若い
ボヒミアン芸術家たちが住み着き、コロニーを築いた村です。
“二つの水彩画“は、二曲からなる作品で2分足らずと短いのにも
かかわらず、夏の夜、水上で舟遊びに興じる人々の姿を髣髴とさせます。
ヒンデミット 「ヴィオラと弦楽合奏のための葬送音楽」
南ドイツに生まれたパウル・ヒンデミット(1895〜1963)は、
教育家、理論家、そして20世紀を代表する世界的なヴィオラ奏者
としても活躍しました。 この曲は1936年、自作のヴィオラ協奏曲を
独奏の為にロンドンに招かれた演奏会の前日、国王ジョージ5世の
訃報に接し、追悼の作品としてわずか1日で書き上げられ、自身の
ヴィオラ独奏で初演されたものです。
各楽章は、中断されずに続けられますが、第1楽章「緩やかに」は、
哀悼の響きを表すかのように、第2楽章の「静かに動きを持って」は
葬送を思わせ、「生き生きと」と記された第3楽章の最後は緩やかになり、
第4楽章はバッハのコラール「汝の玉座の前に我ともに歩まん」で終わります。
ハイドン 交響曲第88番ト長調 「V字」
この曲の「V字」という愛称は、ロンドンの出版社が1781年から、23曲の
ハイドンの交響曲を出版した際、それぞれの作品にAからWの文字を
与えたことによります。 この曲は、従来から演奏される機会が多いの
ですが、それは、素材を最大限に生かした緻密で緊密な構成、和声法や
対位法の洗練された処理など作曲技法の完成度の高さに加えて、旋律の息の
長い継続性といった特徴にも由来し、全曲にわたってさまざまな深みの
ある情感をかもしだしています。