≪オーケストラの楽器≫ ファゴット 大野智也佳



ファゴットは国によって呼ぴ方が異なり、イタリア語ではfagotto、英語ではbassoonといいます。fagotは薪束(まきたば)という意味、bassoは低い音という意味です。薪の束のような楽器を抱えて低い音を出すというイメージですね。

く楽器の構造について>
 ファゴットは約2.7mの長さを持ち、最も細いボーカル(リードを付け、息を吹き込む金属製のS字型の管)からベルの先まで、緩やかな長い円錐形のホール(穴)があいています。そのままでは長くて演奏できないので、ブーツジョイントに2つの穴をあけ、底をU字管でつないで、大きく2つに折れ重ねた形にしています(図1)。また、運ぶときに便利な様に5つの部分(最近は6つもあり)に分解できます。リードは葦(あし)の茎(竹箒の柄を想像してください)を削った2片を組み含わせて作ります(図2)。リードだけを吹くとビャーという音が出ますが、このビャーが複雑なほどたくさんの倍音が作られ、楽器につけて吹いたとき、よい音が出ます。テナージョイントからベルまでの木部は楓(かえで)で出来ていて、暗い小豆色や茶色などの色調に仕上げられています。この楽器には29〜33個の鍵(キー)があり、10本の指を駆使して30個以上の鍵を操作しなければなりません。左手の親指は1本の指で分担する鍵が7〜11個!もあります。また、楽器のなかに前面と後面を貫通する金属製の心棒が通っていて、前面の鍵を押して後面のタンポを開閉させるなんていう、遠隔操作もやっています。

くファゴットの昔について>
 この楽器がいつ頃、誰に考えられて作り出されたのかは正確には判っていませんが、演奏記録などから、16世紀の中頃から使用されるようになったと考えられています。最初はオルガンやハープシコードの左手の役割(主に内声部)から、作曲家や演奏者達の要求や好みがだんだん変化・発達して、独奏楽器としての音が求められるようになってきました。
 ファゴットは3オクターブ半の広い音域を持ち、音域によって音色に様々な特色を持ちます。低音域は重厚な響き、中音域は愛嫡があって、ほのぼのした感じもすればぺーソスを帯ぴた表情もかいま見せます。高音域は発音にたくさんの息(空気)の圧力を必要とします。したがって、緊張感のある苦しげな表情を帯ぴてきます。いろいろな人がファゴットの音色について表現していますが、ベインズはその音色を「一風変わった、独特の音質で適切な言葉で表現することができない。しかし、男性の声とホルンの間のようで、多くの場合甘く愛矯のある音である」と述べています。シットヴェルは「海の神が話しているようだ」とその著書に書いています。また、高昔域のソロで有名なストラビンスキ一作曲の「春の祭典」冒頭のソロパッセージ。ストラビンスキー自身の言葉によると「鳴らない昔を必死になって出そうとしている感じ一」が出したかったのだそうです。
 加えてファゴットの得意技は、弾むようなスタッカート奏法です。とてもコミカルでひょうきんな印象を与えます。
 モーツァルト、ウェーバー、ブラームス、シベリウス、ラヴェル、ストラビンスキー、プロコフィエフなどなど、多くの作曲家がファゴットの活躍する作品を書いています。
 本日演奏するチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」も、ファゴットに非常に重要な役割が与えられた作品です。

(1999.12.12 第27回定期演奏会プログラムから)


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