≪オーケストラの楽器≫ オーケストラについて 西山 誠



 このコーナーは、オーケストラの楽器について書いてきましたが、今回はオーケストラそのものについて少し述べてみようと思います。
 ヨーロッパの演奏単位は、演奏形態そのものを呼ぴ名としていることが多いのです。ピアノ三重奏、弦楽四重奏、木管五重奏などなど。ブラスバンドは真鍮製の楽器、つまり金管楽器だけで編成されたバンドです。日本では木管楽器を含む楽団をブラスバンドと呼び習わしていますが、本来であれば、ウィンド・アンサンブルとか吹奏楽団というべきものです。
 紀元前5世紀に頂点を極めたギリシア文明には、ギリシア劇と呼ばれる洗練された演劇があったことはよく知られています。この劇が演じられた円形劇場の舞台上で、楽器奏者とダンサーに割り当てられたスペース(舞台の前の方)をオルケストラと呼んでいました。(日本の伝統芸能「能」の舞台で主役の演技を支える能管、小鼓、大鼓、地方≪いわばコーラスのようなもの≫の在り方に似ています。配置される位置は後ろの方ですが)。このオルケストラがオーケストラの語源だと言われています。
 当時、隆盛を極めたギリシアとローマをヨーロッパと呼んでいいかどうかは判りませんが、2つの文明が哀退し、キリスト教時代に入ってから後の1000年あまりの間、中世ヨーロッパは「暗黒の時代」といわれ、文明と呼べるものはなかったように思われます。少なくとも音楽の分野においては。
 キリスト教の教義により、神に捧げる祈りの言葉は、男声による単旋律のものしか認められていませんでした。伴奏も禁じられていたのです。グレゴリオ聖歌やお遍路さんの謡う御詠歌を思い浮かべられたらいいと思います。「単純」こそ「真」であり、祈りの根源だったのです。もちろん、世俗の音楽にはこういった制限はありませんでした。しかし、音楽を主導する教会の音楽が単純さをよしとしていたのですから、世俗音楽だけが特別に発展していく余地のあるはずもありません。
 少し大袈裟ですが、宗教の呪縛から逃れて、ヨーロッパの音楽(特に器楽の分野)が音楽として自立するのは、バッハやヘンデルなどの努力期間の後、ハイドン、モーツァルトの時代になってからだと思います。この二人の作曲家によって完成された弦楽四重奏の様式が、クラシック音楽の基本になったのです。
 もちろん、オーケストラでも弦楽四重奏が基本形になっています。しっかりとした弦楽4部(曲によっては5部)に、木管4部(アンサンブルしやすいように、各パートのトップ奏者は隣合わせになるように座る)が色を添え、全体をまとめる力の強い金管楽器も、4部構成を基本としています。これにティンパニを始めとするパーカッションが加わって、現代のオーケストラの完成です。作品によっては、ティンパニ・トランペット・オーボエを使わずフルートもl本、全体で30人もいればいいという曲もあれば、最低でも120人の奏者を集めなければ演奏できない曲もあります。でも、どちらもオーケストラの曲であり、基本の形は同じものです。
 では、ベルリオーズ、グノー、べートーヴェン、それぞれのオーケストラの使い方の違いを聴き比べてみてください。楽しいですよ。(西山 誠)

(2001.6.17 第28回サマーコンサートのプログラムから)


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