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演奏曲目紹介

ここでは、2011年9月に開催した 千葉大学OBOGオーケストラ第5回定期演奏会で演奏した3曲について解説&紹介しています。


L.v.ベートーヴェン
交響曲第5番(運命)

L.v.ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
C.M.v.ウェーバー
舞踏への勧誘序曲(ベルリオーズ編)

『交響曲第5番 (運命) ハ短調 Op.67』 L.v.ベートーヴェン

 「ベートーヴェン作曲、交響曲第5番」といえば、あらゆる交響曲の中で、否クラシック音楽と言われるあらゆる作品の中で、最も有名な作品のひとつではないだろうか。普段クラシック音楽を聴かない人でも、この曲だけは耳にしたことがあるだろう。日本では、「運命」という愛称でも親しまれている作品だが、この作品はベートーヴェンの第3交響曲「英雄」や第9交響曲とともに、交響曲というジャンルの歴史を画する作品でもある。その特徴をいくつか挙げてみる。

特徴1:動機の徹底した活用
 いきなりユニゾンで「ンタタタター!!」とくる衝撃的な開始はあまりに有名だろう。ベートーヴェンはこの作品において、この至極シンプルな動機(音楽を構成する小さな単位)を徹底的に活用した。第1楽章におけるそうした徹底ぶりは見事で、このシンプルな動機から、かくも立派な音楽に仕立て上げたことへの驚きとともに、そこには構築美すら感じさせる。さらにこの動機は他楽章を含む曲全体に渡って作用を及ぼしている。第2楽章以降の全楽章のあちこちに、散りばめられ全曲のモットーとして機能しているこの動機を聴き探すのも、おもしろいかもしれない。

特徴2:楽章間の関連とフィナーレへの志向性
 全楽章に渡って同じ動機が作用しているということで、必然的結果として楽章のあいだに有機的な関連が生ずる。そうした関連に加え、第3、4楽章の連続、フィナーレに至るクレッシェンドと勝利の表現に象徴されるのは、この作品がフィナーレを到達点として構想されているということである。(それまでの交響曲は、あくまで第1楽章に重きが置かれており、終楽章に関しては軽く済まされることが多かった。)よく聞く、「苦悩を乗り超えた先の歓喜」という、ベートーヴェンの信条とも言うべきものが、作品全体を通して表現されていると言える。

特徴3:楽器法
 フィナーレが到達点という設計は、フィナーレで楽器が増やされることからも言える。第4楽章で、ピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンが加わるので、是非その点も注目していただきたい。因みに、これらの楽器の交響曲への参入は、当時としては珍しいことであったが、この作品をきっかけとして、それ以後の彼自身や他の作曲家の交響曲作品で頻繁に使われるようになった。

 以上の特徴は全てが新しいものというわけではなかった。しかしこのような特徴を持つこの作品を、交響曲を作る際に一つのモデルとした作曲家は少なくない。この作品によって、その後の交響曲の一種の原型が形作られたと言えるであろう。
 さて、作品の大まかな特徴については述べさせて頂いた。最後に、簡単に各楽章の紹介をしたいと思う。

第1楽章:Allegro con brio ハ短調
冒頭の「ンタタタター!!」。弦楽器のみのユニゾンに聞こえるが実はここ、クラリネットも一緒に演奏していることをご存じだろうか。この楽器の特徴で殆ど弦楽器に溶けてしまっているが、よくよく聴くと確かにクラリネットの響きが、オーケストラ全体の響きを支えている。是非ご注目頂きたい。
下降形の「運命の動機」に対して、明るく優しい第2主題は上行形。無慈悲な運命への反抗とも取れるが、その下で微かに鳴る低弦による「運命の動機」が、不安を投げかける。
再現部でのオーボエのカデンツァは、無慈悲な運命に対する嘆き・哀愁を感じさせる。
クライマックスは畳み掛けるような運命の動機との格闘。劇的な幕切れとなる。

第2楽章:Andante con moto 変イ長調
 運命との劇的な格闘の後、僅かに訪れた安息の時。この楽章は自由な変奏曲となっており、安らぎに満ちた楽章だが、時折挟む金管群によるファンファーレはハ長調になり、フィナーレを暗示する。また、木管楽器を含む柔らかな音色の変化にも富んでおり、テーマの変化と併せて楽しんでいただきたい。

第3楽章:Allegro ハ短調
 地の底で蠢くような主題が低弦によって奏される冒頭は、異様な雰囲気を醸し出す。と、突如運命の動機が、ホルンにより奏される。この強烈なホルンの主題提示はまさに、運命と闘う者の「魂の咆哮」と言うべきではないだろうか。転調して同じ形を繰り返した後、魂の咆哮は一旦沈黙へ向かう。
次いで出てくるトリオは明るいハ長調に転じ、低弦によって豪快に主題が奏される。次々と追いかけっこのように入ってくるように書かれている(フガート)点も面白い。しかしそれも徐々に沈静化へ向かい、低弦のスケルツォ主題に回帰する。
 回帰したスケルツォは、それまでの燥ぎっぷりが嘘のように、抑圧されたような緊張感の中進む。スケルツォ部分を終えると、ティンパニが、「運命の動機」を断片的に叩き、それに呼応するように弦楽器が動き出す。そして暗澹たる世界の中、ようやく僅かな光明を見出し、それに近付こうともがくうち吸い寄せられるようなクレッシェンドを経て…

第4楽章:Allegro ハ長調
 一気に視界が開け、輝かしい勝利のファンファーレが鳴り響く。それまでの一切の不安や恐れに打ち勝った、勝利の歌だ。楽器も増し、オーケストラの響きに一層の輝きと厚みが加わっている。
 第2主題は3連符の上行形で、明らかに「運命の動機」を思わせるが、以前の下降形それと違い、もはやそこに恐れはない。
 展開部終盤、盛り上がりが頂点に達したところで急に力をなくし、スケルツォに回帰する。トラウマの回帰、とでも言えそうだが、すぐに力を取り戻し、もはや迷いや恐れがないことを、再びの勝利のファンファーレで高らかに宣言する。
再現部を終え、徐々にテンポと音量を増し、それがピークに達した所で、全管弦楽で勝利のファンファーレを高らかに歌い上げる。そして最後はくどいほどに和音を連打し、力強く全曲を閉じる。

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『ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 変ホ長調 Op.73』 L.v.ベートーヴェン

 「私がもし戦術のことを、対位法くらいよく知っていたら、目にものをみせてくれように」
これは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがフランス将校とすれ違った際に、拳を震わせながら呟いた言葉と言われている。1809年、ウィーンはナポレオン率いるフランス軍に占領され、ルドルフ大公すらもウィーンから逃げ出しているという不穏な状況であった。そのような混乱と不安に満ちた中、ベートーヴェンはウィーンにとどまり、この壮大なピアノ協奏曲を書き続けていたという。
 このピアノ協奏曲は「皇帝」と呼ばれているが、ベートーヴェンによってつけられた呼び名というわけではなく、誰によるものかは定かでない。また、特定の皇帝と関連付けられているわけでもない。しかし、この曲の堂々たる様子はまさに「皇帝」を思わせるものであり、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で最大にして傑作と呼ぶに相応しい作品であろう。初演は1811年のライプツィヒ・ケヴァントハウスにて。ピアノ独奏はヨハン・フリードリヒ・シュナイダーであった。ウィーンでもカール・ツェルニーのピアノ独奏によって演奏されたが、その後はベートーヴェンが没するまで演奏されることはなかったという。
ベートーヴェンの弟子であり、援助者でもあったルドルフ大公に献じられた。

第1楽章 Allegro 変ホ長調 4分の4拍子
独奏協奏曲式ソナタ形式。カデンツァ風のピアノの独奏で始まるが、この部分は序奏に当たる。提示部は、第1主題をオーケストラが提示してからピアノが引き継ぐ。第2主題はヴァイオリンのスタッカートで奏され、ホルンに引き継がれる。その後ピアノが半音階的に上昇しながら登場し、第1主題を演奏。テクニカルに展開していく。経過句を経てから第2主題を変奏して展開させ、オーケストラがそれを引継ぐ。結尾部はピアノが縦横無尽に駆け回るような華やかなものである。展開部は木管が第1主題を奏して始まり、豪快に協奏しながら第1主題を中心に展開する。再現部は再び序奏から始まり、主題の再現自体は型どおりである。ベートーヴェン自身により、「カデンツァは不要である」という指示がされている。最後は第1主題をもとにした、長くダイナミックなコーダで締めくくられる。

第2楽章Adagio un poco mosso ロ長調 四分の四拍子(版によっては二分の二拍子)

自由な変奏曲形式。ヴァイオリンによって優しく美しい主題が奏され、ピアノがそれをピアニッシモで受ける。その後は弦楽器のピチカートに乗ってピアノが主題の変奏をしていく。それを木管が引き継ぐ。ピアノは静かに16分音符の連なりを演奏し続ける。楽章の最後では3楽章の主題をゆっくりと予告し、そのまま3楽章へとなだれ込む。

第3楽章 Rondo Allegro ― Piu Allegro 八分の六拍子
ロンド風ソナタ形式。2楽章の最後に予告されていた主題が、ピアノによって力強く演奏される。すぐにオーケストラに引き継がれ、エネルギッシュに進んでいく。この主題が何度も繰り返されるため、楽章全体がロンドのような風体を示している。曲の最後では、ティンパニの伴奏に乗ってピアノが徐々に静まっていったかと思うと、突如猛然と立ち上がったかのようなピウ・アレグロの音階を駆け抜け、オーケストラがそれを受け取って華々しく曲を締めくくる。

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『「舞踏への勧誘」序曲(ベルリオーズ編) ニ長調 Op.65』 C.M.v.ウェーバー

 C.M.v.ウェーバーは、ドイツの初期ロマン派の作曲家であり、ピアニスト・指揮者としても活躍した。「魔弾の射手」「オベロン」「オイリアンテ」などのオペラは内容を知らない人でも序曲のみの形で演奏されることも多い。また最近では「交響曲第1番」も再評価が進んでおり、協奏曲の分野でも「クラリネット小協奏曲」「ファゴット協奏曲」など、名作は多い。

 本日演奏する「舞踏への勧誘」は、もともとピアノ独奏用の「華麗なるロンド」という作品であり、妻のカロリーヌのために1819年に作曲された。舞踏会を舞台としたドラマ的なストーリーがしばしば語られるため、「舞踏への勧誘」というタイトルの方がよく知られているかもしれない。H.ベルリオーズという中期ロマン派のフランス人がオケ版へと編曲したのだが、調性を変ニ長調からオケ全体の鳴りやすいニ長調へと移したり、楽器編成も効果的にピッコロが使われたり、同じメロディーでも使う楽器を変えたりと、いろいろな工夫がなされている名編曲といえよう。
全体は、序奏とコーダを伴うワルツ集という形になっており、第1のワルツ主題が中心となるように扱われている。そのため、ウェーバー自身のタイトルのように自由なロンドと捉えることができる。このように、複数のワルツを編み合わせる手法は、シューベルトの作品にも見られる。

 序奏では、紳士が淑女に向かって丁寧にダンスに誘うチェロのソロで始まる。これに対して淑女が遠慮がちに断る木管のアンサンブルが呼応する。紳士は重ねて誘うと、今度は「喜んで」といった調子で応答する。そのあと二人の会話が少しあり、序奏が終わる。
主部では、いよいよ二人が踊り始める。まずは何度も出てくる第1ワルツの主題が聞こえ、曲が進んでいくと、これと対比を成すかのような優雅なワルツが現れる。この作品では、一度クライマックスを築き、これまでに提示したワルツを次々と回帰させる巧妙な手法が用いられている。ここでいかにも曲は終わりそうだが、拍手はもう少し待っていただきたい。
 二人の踊りが終わると、序奏の雰囲気が再び戻ってくる。これは踊り終わった後の紳士と淑女の会話で、「どうもありがとう」と二人で仲良く帰っていくシーンとも言われている。

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