千葉大学OBOGオーケストラの公式Twitterはじめました。
フォロー お願いします!
演奏曲目紹介

ここでは、2012年9月に開催する 千葉大学OBOGオーケストラ第6回定期演奏会で演奏した3曲について解説&紹介しています。


L.v.ベートーヴェン
交響曲第6番「田園」

E.エルガー
チェロ協奏曲
E.グリーグ
4つのノルウェー舞曲

『交響曲第6番 「田園」 ヘ長調 Op.68』 L.v.ベートーヴェン

木が3つ

 第6交響曲「Pastorale(パストラーレ)」。ベートーヴェンが自ら命名した唯一の交響曲。(その他今日知られる「英雄」(第3番)や「運命」(第5番)は全て逸話から後世の人がつけた)各楽章にも作曲者自身によって標題がつけられている。そして音楽自体かなり具象的で、音楽によって風景画が描かれている。しかし音楽は目で見るものではなく、耳で聴くものなので、その「音による風景画」は、目で見た風景を心で感じ、その感じた気持ちを音にする、という手順を踏んでいる。作者自身も「説明なしでも全体は音画としてよりも感情として理解される」と、書き残している。つまりこの音楽は、単なる自然風景の描写をした音楽ではなく、自然を前に感動した人間の気持ちを表現したものということ。

 この曲も、前作の第5交響曲同様かなり革新的だった。簡単に言えばそれは、「Pastorale(パストラーレ)」という標題がつき、そしてその標題(テーマ)を、音楽が極めて具体的に描写したということ。そしてこの為に本来4楽章で構成される交響曲が、5楽章構成となったこと。このことにより、「標題音楽」という新しい形式が生まれ、それが後の作曲家ベルリオーズの「幻想交響曲」や、リスト他ロマン派作曲家によって、交響曲のように形式にとらわれない「交響詩」というものにまでつながっていく。この作品の後世に与えた影響とアイディアは計り知れない。

 第5交響曲と第6交響曲は同時期に作曲され、初演も同日行われている姉妹作。しかし(第5に関して詳しくはここでは割愛するが)前作はそれまでの「交響曲」というジャンルにおける究極の作品として完璧なまでに完成された作品であり、後者は後世に大きなアイディアと影響を与え、次の時代を切り拓いた。この2作は、過去からの到達と未来の開拓という大事を、一挙に成し遂げたベートーヴェンの偉大な仕事である。

第1楽章 Allegro ma non troppo 「田舎に着いた時の晴々とした気分の目覚め」
 ベートーヴェンの交響曲の第1楽章は劇的な曲調が多い中、おそらく唯一無二の穏やかな楽章である。但し形式は第5交響曲と同様、全体のバランスがとれた見事なソナタ形式で書かれている。

第2楽章 Andante molto moto 「小川のほとりの情景」
 「単なる風景描写ではなく、感情の表現」とは言ったが、しかしこの楽章からはいかにも小川のせせらぎとその周辺の自然が「風景」として目に浮かぶのは筆者だけではないだろう。楽章の最後には、木管楽器によって小鳥のさえずりが歌われる。フルート=Nachtigall(ナイチンゲール)、オーボエ=Wachtel(ウズラ)、クラリネット=Kukuk(カッコウ)と譜面に書いてある。ベートーヴェンの作品で楽譜にここまで具体的描写が書かれたものは他にはない。 (因みにこの楽章の標題の原語表記は「Szene am Bach」。そうつまりあの大作曲家バッハは「小川さん」なのである。閑話休題。)

第3楽章 Allegro 「田舎の人々の楽しい集い」
 事実上のスケルツォ楽章。スケルツォ部分(3拍子)とトリオ(2拍子)をそれぞれ2回繰り返す。ベートーヴェンの書いたスケルツォ楽章の中で、最も素朴で、文字通り「楽しい集い」の音楽であろう。この楽章からトランペットが参加する。最後は急激にテンポを上げ、目覚ましく轟くホルンの狩の信号音がぷつりと止んだと思ったら…

第4楽章 Allegro 「雷雨、嵐」
 急に雲行きが怪しくなる様子が目の前に浮かびそうな音楽になったらそれはまさに嵐の前兆。急に変わる風向き、日は陰り徐々に暗くなってきて、ついには轟く雷鳴稲光そして横殴りの雨!!といった画がモロに浮かぶ感じだ。しかし「ベートーヴェンの住んでいたドイツ・ヨーロッパでこんな激しい嵐はなく、これじゃ南国のスコールだ」という声もあったりするとかしないとか…(まぁしかしこの音楽もあくまで嵐を前にした人の「感情」を表す音楽、と考えればさほど違和感も無い…のかな?)
 楽器編成上ではこの楽章が全曲中最大であり、(ティンパニとピッコロに至ってはこの楽章のみだが)この劇的な嵐の場面を魅せていく。その後、嵐は徐々に遠くへと去っていき、遠くに行った雲から微かに稲光が見える。嵐が去ったのをゆっくり確かめるようにオーボエが平和と喜びに満ちたコラール風の旋律を吹き、最後にフルートの上行音階が晴れ上がった世界を告げ…

第5楽章 Allegretto 「羊飼いの歌。嵐の後の喜ばしく感謝に満ちた気持ち」
 筆者自身この曲を聴いて、こんなにも「感謝」という感情を呼び起こされる音楽があるのか、と感じた。もう聴いているだけで「嵐の後の喜ばしく感謝に満ちた気持ち」になれる素晴らしい音楽であると思う。ここまでの(特に第3・4楽章からの)流れがあるからこそ、この気持ちは一入で、やはりこの辺の全体を見通した構造構築はベートーヴェンの交響曲だなと、感心してしまう。
 トランペット、トロンボーンは引き続き参加してオケは豊かな響きをもち、幸福感あふれる音楽が紡がれてゆく。最後はこれまでのすべてに感謝するかのような祈りの音楽となり、心安らかに曲を終える。

▲このページのトップへ

『チェロ協奏曲 ホ短調 Op.85』 E.エルガー

 よく作曲家の成功を陰で支えた妻の存在が取り沙汰されることが多いが、エドワード・エルガーもその「内助の功」によって大作曲家になったうちの一人である。

 エルガーはソースの名前にもなっているイギリスのウスターに1857年に生まれた。楽器やを営む傍ら地元の教会オルガニストでもあった父親から譲り受けた音楽的才能はあったが、家が貧しく専門的な教育を受けることができなかったエルガーは、ほぼ独学でバイオリンや作曲技法を学んだ。青年となったエルガーは音楽教室でピアノを教えていたが、ここで後の妻アリスと運命的な出会いを果たすことになる。

 時にエルガー29歳の1886年10月6日、イギリス陸軍少将の娘であったアリスが音楽教室に入門してきたのであった。片や地方の個人商店の息子、片や父親はナイトに叙せられている陸軍少将の娘。このはっきりと身分の違いがあった2人が、なんと深い恋に落ちたのであった。当然猛烈な周囲の反対があったがそれを押し切り結婚。この時、大作曲家エルガーへの歩みがスタートしたのであった。この時エルガー32歳、妻アリス40歳、1889年の春のことであった。
 妻はいくら作曲をしても売れない夫の才能を信じ、収入がない中でも自分の両親が残した遺産を使って懸命に子育てをしながら、献身的に夫を支え続けた。
 そんな努力が実を結び、ついに1899年、エルガーが42歳のときに作曲した「エニグマ変奏曲」が大ヒット。大作曲家の仲間入りを果たした彼は、威風堂々や交響曲第1番など次々にヒットを連発する。さらにケンブリッジ大学の博士号やナイトの称号を授けられ、田舎の貧しい音楽家が大作曲家へと変貌したのであった。

 しかし時代は第1次世界大戦の足音が聞こえてきた時代。エルガーの活躍も10年ほどで次第に陰りが見え始めた。交響曲第2番では今までのような歓声をもって聴衆に迎えられず、自身の健康状態も悪化した。1918年、60歳になったエルガーは慢性的な病弱から扁桃腺の手術をする。その夜家に戻ったエルガーは最晩年の傑作、チェロ協奏曲の第1楽章第1主題を書いたのであった。孤独に彷徨うようなメロディーにはあきらめと疲労が込められているようである。翌1919年に初演を迎えるが、演奏は聴衆たちからは理解されなかったのであった。
 翌年、長年エルガーを支え続けた最愛の妻アリスが71歳で息を引き取る。傷心のうちにペンを置いた大作曲家はもはや再起しようとはせず、この曲が最後の大作となった。
2人の墓には「私が成し遂げたことは、妻のおかげによるところが大きい」という言葉が記されている。

 作品は4つの楽章からなり、第1楽章はチェロ独奏の威厳のあるレスタチーヴォで始まる。この旋律は2楽章への繋ぎのピッツィカート、そして第4楽章の最後に堂々と登場し、この曲を支えている。1楽章と2楽章は切れ目なく演奏される。

▲このページのトップへ

『4つのノルウェー舞曲 Op.35』 E.グリーグ

 エドヴァルド・グリーグ(1843-1907)はノルウェーの作曲家です。 

 グリーグの生きた当時のノルウェーはスウェーデンとの連合王国でしたが、ノルウェー人の連合への不満によって独立への動きが高まった時代でした。
 その様な中グリーグはノルウェーの自然や文化をこよなく愛し、また、自国の民俗舞踊や民謡に大きく影響を受けました。作品の中にもその民族音楽の要素を多く取り入れており、特に「抒情小曲集」をはじめとするたくさんのピアノ曲や、歌曲を聴くと、グリーグが触れていた自然や目の前に広がっていた情景が想像され、そして溢れんばかりの想いが伝わってきます。

 この「4つノルウェー舞曲」も、民族音楽の影響から生まれた音楽の一つで、もともとはピアノ連弾の曲として1981年に作曲されました。今回演奏する管弦楽版は、のちにハンス・ジット(ボヘミア出身のドイツのヴァイオリニスト・作曲家・音楽教師)によって、編曲されたもので(1988年頃といわれている)、各楽器の特徴が活かされた色彩感の豊かなものとなっております。

TAllegro marcato
 三部形式(A-B-A)。始めは4分の2拍子の軽快で情熱的な舞曲。衝撃的な曲の冒頭の後に、クラリネットとヴァイオリンによって緊迫感のある弱奏で開始されます。その後、主題が各楽器に登場し、速い展開の中でアクセントを活かしながら緊張感が増し前半部を終えます。中間部は前半部とは対照的な穏やかな雰囲気で、オーボエなどの各楽器がのびやかに歌います。微妙な調性的(和声的)な変化によって、光が広がったり、時に翳りを見せながら、光彩感豊かに進められ中間部を静かに終え、再び前半部の主題に戻ります。

UAllegretto tranquillo e grazioso
 4曲中最も有名な曲です。三部形式。4分の2拍子の落ち着いた雰囲気の舞曲で始まります。 オーボエによって始められる主題は、優美なステップで近づいたりジャンプしたりする情景が目の前に浮かび上がってきます。突如としてエネルギッシュな中間部が現れ、最初の主題を用いながらも急き立てられるように情熱さを増していき、また急に何事のなかったように落ち着いた前半部に戻り、静穏に曲を終えます。

VAllegro moderato alla Marcia
 三部形式。行進曲風の舞曲です。木管楽器で明るく快活に始められ次第に盛り上がっていき、全奏となったときは、主題が三連符の形に変わって登場するなどによって、とても賑やかな雰囲気です。中間部は三部形式の中間部の位置づけでありながら、前半部の主題の変奏となっており、前半部のG-durの快活な性格と対照的に、同主調のg-mollで柔らかく哀愁漂う旋律が奏されます。

WAllegro molto
 導入部と終結部を持った三部形式。
 ミステリアスな雰囲気の弱奏で低弦により曲が開始され、オーボエとホルンの何かを予感させるような動機をきっかけに緊張感が一気に高まり劇的に導入部を終えます。そのオーボエとホルンの動機は次の主題の中に用いられて元気の良い性格で始まります。中間部は導入部の主題を中心にどこか怪しげな雰囲気で曲が進みますが、先ほどのオーボエとホルンの動機による前半部の主題も形を変えて顔を出し、全体を有機的につないでいます。再び前半部の主題に戻ったあと、終結部ではどこか名残惜しそうに前半部の主題が穏やかに落ち着いてきますが、最後は突如として一気に駆け抜けるように華やかに曲を締めくくります。

▲このページのトップへ