交響曲第7番を彩る特殊楽器
Glockengeläute(tief)([低音の]鐘の音/独語)
鐘といえばベルリオーズの「幻想交響曲」を思い浮かべますが、意外とオーケストラ曲ではしばしば用いられている楽器です。
ふつう、編成に「鐘」とあれば、Chimes(コンサートチャイム、またの名はTubularbells。管で出来た鐘。のど自慢のあれです。)を用意します。
しかし、指揮者の曲の解釈によってはチャイムの音で満足しないこともしばしば。
そうなったら何か別のもので試行錯誤しなければなりません。
いい音が出る「金物」が決して演奏し易いとは限りません。打楽器奏者の悩みの種です。
マーラーの交響曲でも鐘はよく使われていますが、第3、第8、第9交響曲では、数個の鐘の音程が指定されており、チャイムが使われることもあります。 それに対し、第2、第6、第7交響曲ではGlockengelaute(tief)、またはtiefeGlockenと書かれ、音程の定まらない複数の金属を叩くとだけ指定しているのです。 どんな鐘の音を表現すればよいのか? 鐘といえば「のど自慢」か「除夜の鐘」の日本人には難題です。(こちらの動画のような教会の鐘で本当に正解なのでしょうか?)
教会の鐘は、数個では音程がはっきりしてしまいます。 演奏会場でこれだけの数のカリヨンは鳴らせません。 ましてや遠くで鳴らす事など、不可能です。 やはり観念的な何かをあらわす為に、音程感をなくす、その再現の為に金属が云々という指示を書き込んだのでしょう。
さて、第7交響曲では第5楽章で登場します。 ただでさえ理解に苦しむ第5楽章のキモです。 はたして何を鳴らし、何をあらわせばよいのでしょう? 判らないからこそ、いろいろな演奏者の解釈を聴いてみたくなる、という仕掛けなのかもしれません。