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楽譜係のおしゃべり

楽譜係のおしゃべり No.14(1999/11/15 掲載分)

#♭♪ お国自慢ができますか ♪♭#

新保 邦明

■各国首脳のティーブレイク

◎シュレーダー:さて皆さん、せっかくのお茶の時間です。お疲れでしょうから政治経済の問題はひととき忘れましょう。どうです、ここはひとつ音楽談議としゃれてみるのはいかがですか。

◎クリントン:いいこと言うじゃないか。政治のほうはどうも明るい話題がないからねえ。しかし君、ドイツ音楽の自慢話ならコールさんの時に充分聞かされてるぞ。

◎シュレーダー:とんでもない。そういうつもりで申し上げたんじゃないですよ。私は逆に、皆さんそれぞれのお国自慢を聞いてみるのも楽しいかなあと思ったのです。確かに19世紀までの音楽の中心は、わがドイツとお隣りのオーストリアであったかもしれません。ところが今世紀に入ると、中心といったものはなくなったように見えるのです。世界のあらゆる場所で、新しい優れた作品が創られる時代になりました。例えば「皆さん方のお国で今世紀に生まれた大作曲家は?」という質問をすれば、たちどころに何人もの名前が挙がるのではないですか。我々のところではシュトックハウゼン、ハルトマンといったところですが、フランスではどういった方がいらっしゃるのでしょう。

◎シラク:う〜ん、第一人者はやはりメシアン先生でしょうなあ。トゥーランガリラなどの作品もすばらしいが、内外の多くの作曲家に影響を与え続けたという点からも、まさに「先生」と呼ぶにふさわしい方です。それから、個人的にはデュルフレのレクィエムなんかも好きだがね。

◎ブレア:英国では、ひと昔前まではベンジャミン・ブリテンを挙げる人が圧倒的に多かったのですが、ここ数年、ウォルトンやアーノルドのファンが急増しています。彼らの作品はかっこいいのが多いですから、若者にもアピールするんですね。

◎エリツィン:ふむ、英国もなかなかのもんじゃの。じゃがな、人材の豊富さにおいては、うちが一番じゃないかと思うとる。ハチャトゥリアン、ショスタコーヴィチを筆頭に、カバレフスキー、アルチュニアン、シチェドリン、シュニトケ……数えだしたらきりがないわ。

◎クリントン:おいおい、そりゃちょっとずるいんじゃないかい。旧ソ連全部を含めての話だろう。君はロシアの代表なんだから、そのへんをきちっとわきまえてもらわないと……。さて、うちの代表選手は何と言ってもコープランドだな。彼はちょうど19世紀最後の年、つまり1900年の生まれなんだが、1年くらいはおまけしてほしいね。市民のためのファンファーレは、何度聴いても気分がスカッとする。軽いところではアンダーソンもいいね。バーバーやバーンスタインもいい曲を書いてるし、ミュージカルのロイド・ウェッバーや映画音楽の大家ジョン・ウィリアムズもすばらしい。ああ、それからジョン・ケージという異端児も忘れないでほしいね。あれっ、ところで小渕さん、日本はどうなんですか。

◎小渕:(ギクッ)……。

 

■次回の予告

 さて、あなたが外国のお友達とおしゃべりをしていて、上のような話題になったとしましょう。そのとき、あなたは堂々とお国自慢ができますか。なに、大丈夫? それなら次回の「おしゃべり」は読む必要がないかもしれません。でも、ちょっと自信がないなあと思われる方は、是非読んでみてください。現代日本の作曲家とその代表作品をわかりやすくご紹介する予定です。お楽しみに。

 

川響楽譜係(Tp新保)

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