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10月定期プログラムより
(2006年10月23日)
14. 『夏のフェスティヴァル、そして新しいシーズン』

 『モーツァルト生誕250年』の年に合わせ今年のオーストリアのザルツブルク・フェスティヴァル(7月27日−8月30日、www.salzburgfestival.at/)はビッグイヴェントでした。モーツァルトの音楽劇作品22作品を一挙にステージに載せたのです。今年の売り上げは2840万ユーロ、約42億6千万円で、最高約9万円もした高額チケットもよく売れたといいます。5年間フェスティヴァル支配人を務めた作曲家のペーター・ルジチカは今年で退任し、来年からは演出家のユルゲン・フリムがこのフェスティヴァルを率います。

 ドイツ南部、バイエルン州のバイロイトで開かれる『リヒャルト・ワーグナー祭』(7月25日−8月28日、www.bayreuther-festspiele.de/)はチケット入手が最も難しいフェスティヴァルです。現在、チケットの初回申し込みから入手まで最低10年待ちといわれます。しかしチケットの値段はザルツブルクと違い最高席で3万円強でした。公や民間の強力な援助を受けているため、チケット料金は比較的低額に抑えています。

 『ワーグナー祭』はここ数年観客層が変わってきています。以前はワーグナー作品の実験劇場として、上演を楽しみに来るワグネリアンの熱気でむせかえっていました。ところが、最近は幕間に帰る人もいて、休憩のたびに空席が増えます。長いワーグナー作品は退屈で苦痛なのか、上演中におしゃべりする人、固い椅子にじっと座っていられない人も少なくありません。民間スポンサーが増えたため、スポンサーの招待客と思われる観客が増え、他の音楽祭やフェスティヴァルのようにきらびやかな今日的な社交の場に変わりつつあるのかもしれません。

 一方、ここ数年のバイロイトの演出家選び、音楽家選びには首をかしげることも多く、現在のバイロイトは決してワーグナー作品上演の最高の場ではなくなっています。祝祭劇場の特別な音響を別にすれば、常設劇場の通常公演でバイロイトより上質で興味深いワーグナー作品の上演、すばらしい歌手に出会うことも多いのです。

 北部ドイツの広域音楽祭、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭(7月21日−9月4日、www.shmf.de/)は、今年21回目を迎えました。同音楽祭の今年のテーマ国はオランダで、オランダのベアトリクス女王とドイツのケーラー大統領も同音楽祭を訪れました。期間中11万7千人の聴衆を動員、141のコンサートや催し物で合わせて13万7千席の85%を埋め、70のコンサートがチケットを完売しました。

 同音楽祭は、教育音楽祭でもあり、毎年世界各国の若者たちがオーケストラ・アカデミーで学びます。この練習見学には延べ6100人が訪れました。著名な音楽家による公開マスタークラスには延べ1500人が聴講に訪れ、リューベックで行ったマスタークラス生による8回のコンサートは合わせて1470人の聴衆を集めました。経済界の支援も活発で、120社が恒常的なスポンサーになっています。


今年新制作した《ニーベルングの指環》から《ラインの黄金》

今年新制作した《ニーベルングの指環》から《ワルキューレ》

今年新制作した《ニーベルングの指環》から《ジークフリート》

今年新制作した《ニーベルングの指環》から《神々のたそがれ》

最演作品の《さまよえるオランダ人》

最演作品の《トリスタンとイゾルデ》

 さて、8月終わりから9月にかけて、音楽・演劇・オペラの新しいシーズン、06/07シーズンが始まりました。ドイツ第4の都市ケルンの市立オーケストラ、ギュルツェニヒ管弦楽団(www.guerzenich-orchester.de)の第1回定期演奏会は8月20、21、22日に行われました。ちなみにギュンター・ヴァントは70年代半ばまで長期にわたりギュルツェニヒ・カペルマイスター、つまりケルン市音楽総監督を務めました。現在のギュルツェニヒ・カペルマイスターはマルクス・シュテンツ(41歳)です。ギュルツェニヒ管はシュテンツの就任以来、興味深いプログラム構成とコンサート・ドラマトゥルギー、そして『GO!live!』(コンサートのライヴ録音CDをコンサート直後に会場で販売)のアイディアを次々に打ち出しています。この第1回定期演奏会はベートーヴェン・ピアノ協奏曲第4番、ジョン・アダムス≪ハーモニーレーレ≫、そしてその日の『第3幕』はワーグナー≪パルジファル≫第1幕から、でした。この『第3幕』はその日のプログラムに関連のある作品を10分程演奏するもので、演奏前に指揮者が曲名を明らかにし、選曲理由と作品解説をします。

 ソリストとしてシーズン冒頭に登場したのはセヴェリン・フォン・エッカートシュタインでした。フォン・エッカートシュタインは今年1月の九響定期演奏会にも登場しました。現在、ドイツの20歳代若手ピアニスト三羽烏(マーティン・シュタットフェルト、マーティン・ヘルムヘン)の1人として大きな注目を浴びています。プログラム後半を聴くためにラフな格好で客席に現れたフォン・エッカートシュタインは周囲の聴衆の質問に気さくに応えていました。日本ではコンサート前半に演奏したソリストが後半を客席で聴く姿をほとんど見かけません。オーケストラと指揮者への敬意、なおかつ他の曲を聴くという勉強のために、とくに若いソリストにとっては重要なことだと思いますが・・・。

ケルン・ギュルツェニヒ・カペルマイスターのマルクス・シュテンツ

最演作品の《パルジファル》