ヴァイオリン 前橋 汀子 Teiko Maehashi

 日本を代表する国際的ヴァイオリニストとして、その演奏は優雅さと円熟味に溢れ、テクニックとハートの両面において、多くの聴衆を魅了してやまない。

 5歳から小野アンナにヴァイオリンを学び、その後、桐朋学園子供のための音楽教室、桐朋学園高校を通じて斎藤秀雄、ジャンヌ・イスナールに師事。17歳で、旧ソ連国立レニングラード音楽院(現サンクト・ペテルブルグ音楽院)創立100年記念の一環として、日本人初の留学生に選ばれ、ミハイル・ヴァイマンのもとで3年間学んだ。ここでは音楽のテクニックのみならず、芸術全般にわたり、幅広い基礎教育を受け、これが今日に至る前橋汀子の音楽的姿勢に大きな影響を与えたといっていい。その後、ニューヨーク・ジュリアード音楽院でロバート・マン、ドロシー・ディレイ等の指導を受け、さらにスイスでヨーゼフ・シゲッティ、ナタン・ミルシュテインの薫陶を受けた。

 レオポルド・ストコフスキーの指揮により、ニューヨーク・カーネギーホールで演奏会デビュー。国内外で活発な演奏活動を展開し、世界各国の代表的なオーケストラとの協演も数多く、ベルリン・フィル、英ロイヤル・フィル、フランス国立管、クリーブランド管、イスラエル・フィル等々枚挙に暇がない。指揮者もメータ、ロストロポーヴィッチ、ケンペ、サヴァリッシュ、マズア、小澤征爾ほか多彩なマエストロたちと協演している。スイス・ロマンド管弦楽団とともに国連コンサートに招かれ、その演奏の模様は全世界に放送された。

 また、レニングラードの変貌ぶりをレポートしたNHKテレビ番組『前橋汀子・わが心の旅』は多くの人々に感動を与えた。

 レコーディングにも意欲的に取り組み、デビュー・アルバム『チゴイネルワイゼン』、文化庁芸術作品賞を受けた『バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ全集』、その他『ヴィヴァルディ:四季』、『メンデルスゾーン&チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲』等々がある。また2001年秋には、小品ながら捨て難い魅力をもつ“ヴァイオリン小品100曲選シリーズ”全6巻を完成、大きな話題を提供すると共に、東京・サントリーホール、大阪・シンフォニーホールをはじめとする日本各地の大ホールで小品を中心とした親しみやすいプログラムによるリサイタルが大好評を得ている。一方、ヴァイオリン音楽の原点ともいえるJ.S.バッハ、モーツァルト、べ−トーヴェン、ブラームスなどの作品の研究にもさらに力を注いでおり、イェルク・デームスとベートーヴェンのソナタを共演、11月にはアナトール・ウゴルスキとブラームスのソナタを共演することになっている。

 現在、東京芸術大学等で後進の指導にも当たっている。


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