第7章 チャイコの5番
選曲会議があった。1年生と、2年生だけで、曲を選ぶとのことだった。
結局、最終決戦で、チャイコの交響曲第5番かシベリウスの交響曲第2番になったが、
最終投票で、チャイコになった。M高校の大曲主義は、このころから始まっていたようだ。
その数日後、楽譜が配られた。
チェロのパート譜だった。
18ページに印刷された長大作の譜面だった。
(T 542小節、U 184小節、V 266小節、W 565小節)
中学の教科書以外の楽譜を演奏したことがない。
16小節か20小節程度の曲とは、小節数でも桁が違った。
しかも、1楽章は、調号が#1つで、なんとか読めたが、
2楽章は#2つ、3楽章は#3つ、4楽章は#4つと、
譜読みが、難しくなった。
おまけに、チャイコの場合は、きれいなメロディーとは裏腹に、
臨時記号がやたらに多く、ダブルシャープやダブルフラットが、
音楽演奏の実戦経験がない僕を悩ました。
学校の教科書で、リコーダを弾くときは、暗譜していたが、
チャイコは、とても、暗譜できないと思い、愕然とした。
そこで、レコードを録音して、覚えることを思いつき、
家に帰って、持っていた、小沢・ボストン響のチャイコのレコードを聞いた。
チェロの音は、メロディー以外は、よくわからなかった。
親友の徹くんに相談した。
徹くんは、中学浪人中の貴重な自宅勉強の時間を割いて、
カラヤン・ベルリンフィル、バーンスタイン・ニューヨークフィル、
ムラビンスキー・レニングラードなどの名録音、フルトベングラー等の歴史的録音、
さらには、ストコフスキーの編曲版まで、揃えてくれた。
徹くんは、図書館代わりにしている、T書店から、レコード芸術をわざわざ調べて、
R レコード店に揃えさせたのである。
徹くんのおかげで、入手可能な演奏は手に入った。
それから僕は、よく楽器を持って帰って名録音をカラオケがわりにして、
弾きながら耳で、楽譜をおぼえていった。
最後まで、演奏についていく感動は、そのたびに、違った。
本番の時は、演奏率(弾けた小節÷演奏すべき小節×100%)でいうと、
80%前後だったと思う。
M高校を含め、通算3回弾いた。今でも、難しい曲だと思う。
僕は、過去に演奏した譜面は、データーとしてコピー譜で保存している。
最近この曲のパート譜を見たが、今でも、簡単に弾ける曲ではなかった。