第9回


第9章 頭打ちのシンコペーション
 チャイコの2楽章の練習が始まった。
非常によく練習した思いがある。
たいがい相棒と2人で弦分奏や合奏に取り組んだ。
序奏の最初の和音が始まるたびに、捕まった。
「捕まる」と言う楽隊用語を初めて覚えた頃でもあるが、常習犯で捕まった。
 顧問のS先生または、弦トレのOGから厳しい注文を受けた。
毎回重点的にいわれることは、「#が付いても高めに弾かずに、楽譜通りの音程を。」
別に深いことは、考えてはいなかった。
その日の気分がハイの時は高め、落ち込んだ時は低め、
今日こそは雪辱をと意気込んでいるときは高め、自信がないときは低め、
晴れた寒い日は高め、雨の降った暑い日は低め、
 だから必然的に練習初めの楽章の頭は高め、練習終わりは低めになった。
 たまたまチャイ5は#系の曲のため、曲の終わり頃は音程の注意も少なかったようだ。
楽章の終わりは、練習で落ち込んでいるので、低めというそれだけだった。
 後に、チューニングメーターで、音程を練習することは、10〜15年後に実現した。
音痴の文明開化までには、長い時間がかかった。
 今は、チェロの師匠が「機械に頼らず耳を鍛えろ」とのことで、
チューニングメーターに頼って、調弦をやらなくなりつつあるが、
オケの譜面の音取りは、いまだに機械に頼っている。
 続いて同級生のN君のホルンのソロの後、レコードで聞くと泣けるようなチェロの美しい旋律がある。
テナー記号(ハ音記号)で書かれた初心者には見たこともないハイポジションで、
たまたま何の音か確かめてからでるため、遅れて出た。
弦トレのOGが言った。「あなたたち、呼吸をして息を止めてでるのよ」
(今は吸いながら小節の頭から吐いているが)無呼吸奏法でメロディの終わりまで弾いていた。
酸素不足のため、アッチェルがかかった。
 「気持ちはすごく伝わったけど、リズムと音程はもっとさらっておいてね。演奏中は呼吸していいのよ。」
1年生にしては、難しすぎるテクニックだった。
 その後、第2主題のクラリネットに来たら、僕らのこの曲の最大の難所がやってきた。
人生今まで生きてきた中で最も長いシンコペーションの始まりだった。
何回弾いても、頭打ちになる。
「シンコペーションは、曲と一緒に覚えるか、小節毎に細かく刻んで覚える」と言うことを苦労して会得した。
後に、シンコペーションができない人がコンマスでもいることを、フィンランデアのフィナーレで知ることになる。


戻る