名古屋大学古楽研究会:The early music club of Nagoya University

3 古楽器紹介

バロック・フルート baroque flute = flauto traverso

古楽研所有のバロック・フルートバラした状態のバロック・フルート

古楽研にあるバロック・フルート(上)とそれをバラした状態(下)。

バロック時代、一般的にフルートと言えば、現在のリコーダー(縦笛)のことを意味し、横笛のことをフルートトラベルソ(横という意味)と呼んでいました。

小さな唄口と6つの指穴、1〜2個のキーが付いたシンプルな構造の横笛は、王侯貴族達に愛され、彼らの趣味の笛として人気を集めていました。

現存する肖像画の中にもフラウト・トラベルソを見ることができます。特にプロシア王のフルート好きは有名で、王自身による作曲の膨大なソナタが残っています!

本体は、柘植、黒檀、紫檀、メープル、象牙等様々な材料を使って作られていました。王侯貴族からの注文では装飾に凝ったものもあったようです。それぞれに特徴ある音色を楽しむ事ができます。

時代を経つつフラウト・トラベルソにはキーが追加されたり、足部管を長くしたり、様々な改良が徐々になされていくのですが、奏者の中には1 keyのフラウト・トラベルソを好み、生涯吹き続けた人もいます。例えばモーツァルトの友人のフルート吹きの様に。

フラウト・トラベルソの素朴で大き過ぎない音量、やや籠った音色、バロック時代の曲を演奏する点で指使いが易しいと言う特徴は現代のフルートにはない特徴です。というのも現代のフルートは科学的大改造を経て、フラウト・トラベルソの特徴を著しく引き継がないものとなったからです。

17世紀終わりから18世紀は、バッハやヘンデル、テレマン、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンといったバロックや古典派の音楽が作られていた頃です。当時トラヴェルソはヴァイオリン、オーボエ等と並んでソロやアンサンブルに大活躍していました。

バロック時代を過ぎても、トラヴェルソは大きくは形を変えず使われ続け、19世紀に発明された金属製のベーム式フルートにゆっくりと取って代わられながら、20世紀になるまで使用され続けました。R. ワーグナーやG. マーラーがベーム式フルートを嫌っていたのは有名です。


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