第23回定期演奏会 神奈川新聞評




神奈川新聞 平成9年6月20日(金)
13面文化欄「私の見つけた演奏会」より



この記事の引用につきまして、神奈川新聞社にhomepageへの転載許可を頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。


執筆者紹介
白石隆生=ピアニスト・指揮者。ウィーン・フォルクスオーパー副指揮者を歴任。室内楽や歌曲で国内外に活動。著作や訳書がある。藤沢市在住。

姿勢と熱意に好感



横浜シティフィルハーモニック第二十三回定期演奏会 (5月25日、グリーンホール相模大野)

 このアマチュア・オーケストラ(児玉章裕団長)は一九八〇年に創立され、現在、団員は約八十人で、音大の出身者は皆無である。これに二十人の賛助団員が活動に加わり、弦と管に専門のトレーナーを迎えて定期的に練習に励んでいる。
 ラベルの「古風なメヌエット」、コープランドのバレエ組曲「アパラチアの春」、ベートーベンの「交響曲第七番」という意欲的な内容だった。常任指揮者の鎌田由紀夫はアマチュア・オケの純粋さともろさを熟知しながら、丁寧な音楽の読みと正統的な音楽つくりを心がけていて、好感がもてた。オケも一生懸命にこれにこたえていた。
 プロの前半では基礎的な面での欠陥が目立ってしまったが、ベートーベンでは団員たちの積極性と熱意が感じられた。欲をいえば、今後、アンサンブルを重視した小規模な作品で、各楽器群のバランスや合奏の妙味などを経験しながら、音楽の喜びを享受し合えたら素晴らしいと思う。