≪オーケストラの楽器≫ パーカッション 今井朋子


 打楽器。一見簡単そうで、その実すこぶる難しいこの楽器たちについて説明することは、うまく演奏することより、さらに困難です。なにしろ種類が多すぎます。その多さ、複雑さときたら『打楽器辞典』なんていう分厚い本が一冊出来てしまうくらいです。それを紹介しろってんだから、無茶な話ですよ、全く。
 閑話休題。「打楽器」ときいて、まず何を思い浮かべますか?バスドラム?スネアドラム?シンバル?トライアングルやカスタネット、タンバリンなどを思い出す方もあるかも知れません。ティンパニ、と思いついたアナタ、相当にツウですね。
 今回の演奏会でもティンパニ、バスドラム、スネアドラム、シンバル、トライアングル、銅羅、はては「桶」まで使っています。いつどこで、どんな楽器を使っているか、なんていうのも見ると面自いですよ。曲ごとに使っている楽器が違いますから。
 さて、打楽器というと「=太鼓」と思われがちですが、もともとは「打って鳴らす楽器」を意味します。一般にはその範囲はかなり拡張されていて、振ったり擦ったりして鳴らすものをも含めた総称として使われています。楽器の分類は非常に面倒なんですが、打楽器に関していえば、それはおおむね二つのグループに分けることができます。ひとつは楽器自体の振動によって音を出すグループで、木琴、トライアングル、シンバル等が含まれます。もうひとつは強く張られた膜の振動によって音を出すグループで、スネアドラム、バスドラムなどの、いわゆる「太鼓」はこちらのグループに属します。前者を体鳴楽器、後者を膜鳴楽器といいますが、この二つのグループはそれぞれさらに細かく分けることもできます。ところで、オーケストラの打楽器奏者ともなるとその分担はさらに広がります。ある時は競技用ピストルをぶっ放し、またある時は村の鍛冶屋さんよろしく、金槌でもって金床をカンコン叩く。カッコー笛も水笛も吹けば、オモチャのラッパも打楽器奏者の分担だったりする。要するに「なんでもアリのパート」なんですね。
 さて、これほど多種多様な打楽器たちは、一体いつ頃生まれたのでしょうか。打楽器の歴史を語ろうと思えば人類誕生までさかのぼらねばなりません。打楽器は、人間の歴史が始まって以来、最古の音具のひとつなのです。
 古代、人間はまず自らの肉体を楽器としました。体を揺らし、手を叩き、大地を踏みならして、様々な音を発見していったのです。そのうち、音のするものを身体に取り付けたり、動物の骨を使ったりして、さらに多くの音が創り出されました。こうして出来た音や楽器は、様々な文明に受け継がれ、改良され、発展していきました。こうした流れのなかで打楽器は非常に重要な役割を果たしていたのです。
 西洋における主要な打楽器の多くは、東洋から取り入れらたものです。現在のようにトライアングルやタンバリン等がオーケストラで使われるようになったのは、打楽器の歴史からみればごく最近のことだといえるでしょう。20世紀になると、管弦楽曲に民俗昔楽の影響が入り、多くの打楽器が加えられるようになりました。
 以上、ややコムズカシイことを並べてみましたが、こういうのって結局無意味なのかも知れません。名前も歴史も後からついてくるものであって、きっと今日、皆さんの目の前で生み出される音こそが大切なんだと思いますから。(ぷ一む、責任重大ですね、これは)
 どうかステージの隅っこにちんまりと控えている打楽器も見てやって下さい。そうしたら、このパートのことも多少お分かりいただけるかも知れません。百聞は一見に如かず、といいますしね。

1998.6.21(第25回サマーコンサートプログラムより)

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