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バロック・ヴァイオリンとは、バロック時代のヴァイオリンのことです。対して、現代のヴァイオリンはモダン・ヴァイオリンといわれています。
弦は、20世紀初頭までに、スチール弦あるいはナイロンの巻弦を使うようになりましたが、バロック時代には、すべて裸のガット弦を使用していました。弓も、現代のようにΣ形に反ってはおらず、山なりでした。弦と弓の違いは、音色に極めて大きな影響を与えます。モダン・ヴァイオリンの音色が均質で丸みのあるものである一方、バロック・ヴァイオリンのそれは、ニュアンス豊かで、渋い(多少ガサつきのある)ものです。
誤解を恐れず言えば、現代の演奏が音量の大小により歌い上げるものだとすれば、バロック時代の演奏は、音色のニュアンス(陰翳)と多様なアーティキュレーションで「語りかける」ものといえるでしょう。各時代の楽器は、各時代の前提に立って製作されており、各時代の様式で使用されていたのです。
音色の渋さは即ち倍音の豊かさを意味しており、アンサンブルにおける音の溶け合いを生み出します。これは、ヴィブラートが常用されない当時の演奏習慣と古典音律により一層効果的になります。ヴィブラートがない一方、当時はメッサ・ディ・ヴォーチェという中膨らみ奏法が重要な表現として存在していました。
ヴァイオリンという種類の楽器は、時代の要求に応えて変化し、生き延びました。過渡期には、バロック時代の多くの名器は大音量と均質な音色の出るものに改造されました。その中で多くの名器が改造に失敗し破壊されました。ストラディヴァリの楽器はこの成功例です。陰翳とニュアンスの世界を極めたとも言える楽器であるヴィオラ・ダ・ガンバ(ヴィオール)は一方でこの変化を拒否し、衰頽していきました。
バロック時代には顎当も肩当もありませんでした。奏者は、ヴァイオリンのエンドピンを首の根元に軽く押しつけ、左手でネックを支えて構えていました。これは演奏の自由度を高める効果がありますが、近年では、現代風に顎当と肩当を装着しているバロック・ヴァイオリニストもラテン系を中心に多く見られます。
このほか、モダン・ヴァイオリンと構造上異なる点は、ネックが太くてかつ胴体と平行であること、指板が短かいこと(現在では指板を長くしたバロック・ヴァイオリンも製作されている。)、バスバーが無いか或いは短いことなどです。
This is a document of the website of the early music club of Nagoya university